雨の中、自転車に乗って家に帰った。
自宅がある通りに入った瞬間、自宅の前あたりに真っ黒の車がハザードランプを光らせて停まっていた。
(…あれはウチの前か?)
自宅に着くと、やはり自宅の前を黒いミニバンが占領している。
雨で濡れた黒いボディがあたりの光を反射して、より一層の存在感を放っている。
中からナビの光が見えたので、運転手は居るな。
文句のひとつでも言ってやろうじゃないか。
ずぶ濡れの自転車を置きたった数歩の距離であったが、肩で風と雨を切って車に向かう。
ピーウィーーーン
車のそばに立ったと同時に後部座席のドアがスライドしていく。
「パパー!!イチゴ!!」
中から登場したのはイチゴ。
と満面の笑顔の我が娘。
呆気にとられた。
そうか、今日は妻が残業の日で義両親が保育園のお迎えをしてくれていたのか。
ニッコニコで大事そうにイチゴを抱えた娘を抱き上げ車から降ろし、義両親に挨拶とお礼を交わし家の中に入る。
そっと胸をなでおろす。
あっぶなかった~。開口一番文句言わんくてよかった。